今回はマロッシのマルチバー2000(高速プーリーキット)を組み込みました。
ボアアップする以前から感じていたのですが、スキッパーはクラッチミートの回転数が高いためか低速での運転にストレスを感じます。
具体的に言うと、以下のようなフィーリングです。
(1)アクセルを大きく開けないとクラッチがつながらないため、発進の時はいきなりガツンと
大きな力が後輪にかかる。
(2)アクセルを絞るとすぐにクラッチが離れるため、低速ではアクセルを小刻みに吹かして
やらないと推進力が維持できない。
ノーマルのスキッパーはそんなクセのあるスクーターですので、基本的に運転していて気持ちよいのは60km/h以上で巡航しているときか、ゼロ発進や低速から思い切り加速するときだけです。低速時は本当にストレスだらけです。
■まずはバイク屋さんに相談
「ボアアップしてエンジンパワーには余裕があるわけだから、早めにクラッチミートするようにセッティングすれば乗り心地がよくなるかな?」と、私は考えました。
この場合、二つの選択肢があります。
(1)クラッチのセンタースプリングを柔らかいものに交換する。
(2)ウェイトローラーを重いものに交換する。
一般的に社外品のセンタースプリングはボアアップなどに合わせて固くするのが普通ですので、社外品でノーマルより柔らかいのを探すのは難しいのではないかと思いました。
そこでウェイトローラーに的を絞りました。スキッパーのノーマルのウェイトローラーはサイズ19×17、重さ12.2gとの事ですが、180ccクラスのピアジオ/ジレラ車では15g前後が多いようです。
そんなわけで、14g〜15gに交換すればよいかな、と想像し、ムラカミモーターサイクルズの村上さんに相談に行きました。
そして、前述の運転フィーリングを改善したいと言ったところ、「プーリーを換えればプッとアクセルを開くだけでスッと前に出るようになるよ」と即答でした。
ウェイトローラー単体の交換では、後々にまたクラッチやプーリーのセッティングを変えていく必要があるかもしれず、そのメンテの手間を考えると、はじめからバランス取りされているキットに頼るのが安全と判断して、その場でマロッシのマルチバー2000を注文しました。
■マルチバー2000入荷
注文のタイミングが良かったせいか、10日も待たずに入荷の知らせを受けました。
その週末、ムラカミモーターサイクルズにイソイソと出掛け、待望のマルチバー2000とご対面です。

スキッパー用はランナー/ヘキサゴンの2ストモデルやタイフーンと共通で、アプリリアSRとも同じ型番(5111258)だそうです。
キットに含まれているパーツの一覧です(同梱の説明書より)。
・ハーフプーリー(6111242B)
・ローラーガイド(2511180B)
・プーリーボス(HUB)(2311250B)
・ウェイトローラー(6611095.S0) 6個一組(20×17、14.5g)
・スライダー(3711335) 3個一組
・スペーサー(0811253B)
・クラッチセンタースプリング(2911085.Y0)
・説明書(5ヶ国語・日本語なし)
※この記事を書いているときに気づきました。クラッチセンタースプリングの型番のY0って黄色のことらしいです。どうみても白です、これは。ま、イタリアンですから気にしないことにします(笑)。
※キットのパーツ構成について、掲示板でご指摘がありました。2002年に仕様が変わったため、ウェイトローラーは12.5gに、クラッチセンタースプリングは白になったのだそうです。
型番はウェイトローラーが66 11095.O0、クラッチセンタースプリングが29 11478.W0 です。
(この項、Ka10さんから情報を頂きました。ありがとうございました。2003.01.11)
■駆動系の分解
またもやイソイソと家に帰って、さっそく作業開始です。まずは外装を外してクラッチケースカバーを開けます。

それから前後のプーリーを外すわけですが、プーリーのナットはそのままではプーリー自体がクルクル回ってしまうため、これを固定する必要があります。
私の場合、市販のプーリーホルダーは使わず、自作のツールを使います。フロント側は下の写真のように自作ツールをクラッチケースにネジ一本で固定して金具を歯車に噛ませます。左手で自作ツールを支え、右手のソケットレンチなどでナットを思い切り緩めます。結構力が要ります。
ナットのサイズはM17です。

リア
側はクラッチカバーの穴に同じくリア用自作ツールの2本のボルトを引っ掛けて左手で固定します(写真は撮り忘れました)。そしてフロントと同じくM17のソケットレンチで思いっきり緩めます。
こうして前後ともプーリーが外れました。

フロント側のプーリー一式を外した後、さらにその奥のスペーサー(矢印)も引き抜く必要があります。私は最初、これに気づかなかったため、四苦八苦してしまいました。
下の写真は外した部品です。
Vベルトだけポリーニ製が入っており、まだ数百キロしか使っていないので、今回はこのまま再使用します。あとのパーツはノーマルです。
ウェイトローラーの写真はありませんが、1mm程度片減りしていました。

■クラッチセンタースプリングの交換
今回の改造で一番の難関と思われたのが、クラッチの分解です。
クラッチアウターを外すと、大径ナットが姿を現します。事前に計測したら、なんとM46でした。
国産車はおおむねM41以下で、代表的なサイズは専用工具がパーツショップで簡単に手に入るようです。
東急ハンズでカタログを見せてもらったところ、M46は19.0sq以上のソケットなら市販品で存在しますが、年末年始の休みにかかるため、発注は年明けになってしまうそうです。そのため一度あきらめます。(発注するにしても年明けでよいわけだし)
マルチバー2000を受け取りに行ったときに、村上さんに訊いてみたところ、こちらではやはり専用工具を使っているとのことです。見せてもらいましたが、46mmのスパナは二輪車用工具としてはスペシャルにデカいです。
やっぱり注文かなあ、と思案していると、村上さんが昔よくやったワザというのを教えてくれました。「万力でナットを挟んでプーリーをグイッと回すと簡単に外れるよ。そんなに強く締めてないから。」
なるほど、万力ですか。それなら間単に入手できます。
ダメ元で試してみることにし、東急ハンズで1780円ほどの万力を購入しておきました。ただ、万力を固定する場所がないため(路上メンテです)、なるべく低いドリルバイスという型の万力を選び、プラスチックハンマーでブッ叩くことにします。

クラッチのナットには、締めるときの目安のためにマジックでマーキングしておきます。
そしてナットを万力に加えさせ、ひざにクラッチを抱えて、万力の台をプラハンで思いっきり叩きました。
最初は固くて歯が立たないかと思いました。時折、ハンマーの力で万力が外れて路面にゴトンと落ちます。何度かトライしたところ、ようやくナットが回りました。プラハンは一部が欠けるほどボロボロになりましたが。

万力を上にしてクラッチを路面に置き、万力を回してナットを外します。
万力は押さえつけるのに都合のよい形なので、スプリングを飛ばさずに分解できました。

クラッチアセンブリの各部にはスプレー式のモリブデングリスを少しずつ食わせます。
特に部品の消耗や欠損などはないようです。
■クラッチユニットの取り付け
クラッチのセンタースプリングを交換して組み上げる作業は比較的簡単でした。
M46のナットはやはり万力で挟んで、万力をハンマーで叩いて締め付けます。
マーキング位置までは半回転ほど及ばなかったのですが、力尽きてそこで妥協しました。
このあと、リヤ軸にクラッチをはめて、M17のクラッチナットを締めます。締め付けの規定トルクは48N・m〜52N・mです。私はトルクレンチと自作ツールで50N・mで締めることにしています。
あと、クラッチユニットを取り付けるときには必ずVベルトを掛けておきます。後からは入りませんので、忘れると徒労が増えます。
■バリエーターの組み付け
最初にキットに付属してきた黒いスペーサーをクランク軸に差し込みます。
フロント側のバリエーター(プーリーの奥側半分)は、村上さんが仮組みしてくれていたため、ウェイトローラーとスライダーにチューブ入りのモリブデングリスを食わせてクランク軸にはめます。
2004.07.10 マルチバーの場合はウェイトローラーのグリスは不要(というか厳禁)だそうです。
K1100LTさんからご指摘がありました。ありがとうございました。
そのあとプーリーボスを差し込んで、クランク軸となじませます。

プーリーフェイス(プーリーの外側半分)を組み付ける前にやらなくてはいけないのが、Vベルトの位置出しです。
Vベルトがリヤプーリーの最外周にかかっている状態だと、フロント側のプーリーナットを締める際にVベルトが挟まった状態となり、ナットに十分な締め付けが効かず、ナット緩みの原因になります。私も一度、このせいでロングツーリング中にナットが緩んでしまった経験があります。
位置出しするには、リヤプーリーを開いて変速状態を作り出し、Vベルトをリヤプーリーの谷に落とし込みます。
50ccクラスならリヤプーリーを手で広げたりVベルトを引っ張ることで変速状態にできるそうですが、125ccクラスともなるとクラッチセンタースプリングとまともに勝負するのは大変です。
私の場合は力ワザですが、フロントのクランク軸にVベルトを掛け、Vベルトの中ほどを上からグイグイと体重を掛けて下に押します。

これでなんとかクラッチセンタースプリングに打ち勝って、Vベルトを谷に落とすことができます。
経験上、Vベルトがクランク軸から1cmも離れれば十分なようです。下の写真ではまだ不足ですが、写真をこれしか撮らなかったので勘弁してください。

その後、ワッシャーやプーリーフェイスを取り付け、M17のプーリーナットを自作ツールとトルクレンチで規定トルクまで締めればOKです。
フロント側も締め付けの規定トルクは48N・m〜52N・mです。
※村上さんからのアドバイスですが、この位置決めはしなくてもVベルトを挟んだまま普通に
締めて大丈夫らしいです。詳しく確認はしませんでしたが、コツがあるのかも知れません。
今度会ったらお話を伺ってみましょう。
■簡単インプレッション
さて、改造が終わって走ってみた感想です。
怖いのでまだスピードは60km/hしか出していませんが、乗り易さは劇的に変化しました。
ゼロ発進からとてもスムーズに加速し、30km/h以下の低速走行でもクラッチが切れずにトルクがちゃんと後輪に伝わっています。まるで自分の運転がうまくなったのではないか?と錯覚しそうです。
これでやっとスキッパーは「普通のスクーター」として乗れる状態になったように思います。(2年間もよく我慢してたもんだ・・・)
皆様ご期待の最高速チャレンジは、私が新しいフィーリングに慣れるまでお預けです(笑)。
■Special Thanks
・ムラカミモーターサイクルズの村上さん、効果絶大です!毎度のことながら感謝します。
・Ka10さん、掲示板でのアドバイスありがとうございました!いつも勉強になります。
・Yahoo!掲示板のzep7667さん、お待たせしました!インプレがショボくてごめんなさいね。
|